【ひとりごと】

ひとりごと

= 自由気ままな雑文 =


「仮面ライダー剣」最終回(2005/1/24)

  あまりネタにしなかったが、実は仮面ライダー剣に結構ハマっていた。ただ、クウガの時のよ
 うにどっぷりと首まで漬かる程ではなかったが(^^;カリス@相川始が気に入っていたのと、劇場
 版の公開以降、それまでまったりと滞って(澱んで(^^;)いたストーリーに一気にはずみがつき、
 まるで坂道を転がるかのような意外な展開が見逃せなくなったというのが理由だった。

  そのブレイドが最終回(49話)を迎えた。そこで全話観終えた総括と、21日に発売された劇場
 版DVD「仮面ライダー剣−Missing Ace−」をあらためて観た感想などを書くつもりでいたのだが。
 カリスを封印して世の中は平和になり、やれやれメデタシメデタシ。となるはずのTVシリーズが
 最後の最後に来て大ドンデン返しをやってくれたものだから、とても総括どころではなくなって
 しまった(^^;

  「ジョーカー@相川始を封印し平和を取り戻してから四年後の世界」とうたった劇場版では、
 全て封印したと思われていたジョーカーが実はもう一体残っていて、それが剣崎たちの封印した
 アンデットを蘇らせてしまったのが発端だった。そして、あの日突然目の前から姿を消した始を
 想い自暴自棄になる天音がストーリー後半の軸となり、邪悪な力に取り込まれた天音を救い出す
 ために再びジョーカーの姿になった始はブレイドによって倒され、永遠に姿を消す。

  この劇場版を観て「クライマックスはこうなる」とすっかり思い込まされた先入観をものの見
 事に粉砕してくれたのがTVシリーズ最終回。封印したアンデットを一体蘇らせればバトルファイ
 トは復活し、ジョーカーの一人勝ちにはならない。そうすれば人類滅亡の危機は回避出来る。だ
 が、そんな剣崎の願いも封印の石は承知せず、ジョーカーが生み出すダークローチ(つまり、
カいゴキブリ
なんだよな、こいつら(^^;)は次々と人々を襲って行く。48話、否、最終回のAパ
ートまでは確実に「劇場版」へと進行するかに見えたストーリー。それが Bパートで信じられな
いような大ドンデン返しが起こる。

  始は、自分を封印できるのは剣崎しかいないと思っていた。ジョーカーである自分を信じ、守
 り、戦ってくれた真実の「友」にだからこそ、封印されたいと願っていたのかも知れない。ブレ
 イドの攻撃をやり過ごし本気で戦う意思のないカリスを挑発する剣崎。それは、ジョーカーの姿
 になれば見境なく攻撃して来るであろう始を知り尽くしている剣崎の、最後の賭けだった。

  アンデットを復活させられないのなら、新しいアンデットが「生まれれば」いい・・・

  人類を滅亡から救うため、そして何よりも信じられる「友」である相川始を封印させないため
 に剣崎が出した結論は「自らをアンデットに変える」という悲しい決意だった。かつて、キン
 グフォームになりたての頃、取り込んだアンデットの影響を受けジョーカーになりかけていた剣
 崎を救ったのは始だった。今度は始を救うために剣崎は「自らの意思で」ジョーカーになろうと
 していた。自分がジョーカーになればこの世にアンデットが二体存在することになり、バトルフ
 ァイトが再開される。二人が戦わず勝利者がいなければ人類滅亡の危機は訪れない。

  ジョーカーとの激しい戦闘によって自らを追い込み、アンデットと融合を果たした剣崎を見た
 始は愕然とする。現れた封印の石に「俺は戦わない」と宣言する剣崎。「戦い続けるのがアンデ
 ットの運命」だと言う始に「運命と戦ってみせる」と言い放つと、「お前は人間の中で生きろ」
 と哀しい笑顔を残して姿を消す。

  人類を救うため、最後の最後に自ら「異形の者」となる事を選択した剣崎。それまではカリス
 @始だけが「異形の者」であったから、本来の「仮面ライダー」が持つ「人間でない悲しみや苦
 しみ」が デフォルトとして刷り込まれているライダー世代としては、どうしてもカリスを一番
 「仮面ライダーっぽく」感じていたのだが、最後に来てブレイドをデフォルト化してしまう展開
 の強引さには降参。正義感も然ることながら職業意識で戦い続けて来たブレイドが、よもや、最
 後の最後に本当の「仮面ライダー」になるとは夢にも思わなかった。

  剣崎は自己犠牲という大きな代償を払い人類を守った、それはいい。だが、始の立場に立って
 みると、どうしようもなく辛い十字架を背負わされた事にならないか。自分のために一人の「人
 間」が「アンデット」に変わってしまったのだから。不慮の事故とはいえ天音の父親を殺したの
 は自分であるという重い十字架を背負っている始を、剣崎は更にがんじがらめにしたのではない
 だろうか。人類と、そして天音を守ったという満足で封印された方が始にとっては幸せだったの
 かも知れない。

  時として、死ぬより生きて行く方が辛い場合もある。人間である事を捨てた剣崎は、ジョーカ
 ーになった以上、始のように闘争本能にもがき苦しむ時もあるだろう。だがそれでも彼は人間の
 心を持って運命と戦い生き続けなければならない。そして始もまた、剣崎と同じ運命を辿るのだ
 ろう。だからこそ、最後に始は微笑んだのかも知れない。二度と逢えなくても、剣崎は自分と同
 じ道を歩む運命共同体なのだから。

  最終決着をつけないクライマックスではあるが、非常に上手くまとめたなぁという気がする。
 始を封印する「劇場版対応クライマックス」は、ベタではあるが意外性がない。しかし、剣崎を
 アンデット化するという「TVシリーズクライマックス」は、視聴者やライダーファンの予想をは
 るかに越えたものではなかったか。シリーズ終盤にはドラマ展開に多少の強引さやご都合主義も
 感じられたが(突然チベットから烏丸所長が帰って来たり、死んだと思われていた橘さんが現れ
 たり(^^;)東映作品らしいせつなさや哀愁が漂い、納得出来るエンディングだった。

  という事は、劇場版ストーリーは一種の パラレルワールドになるのだろうか。「龍騎」の劇
 場版みたいに。複数のエンディングがあるゲームで言えば、主人公が犠牲になるTV版はバッドエ
 ンディング
という事になるのだろう。でも、それでいいのだと思う。何故なら、ブレイドは最後
 の最後に「仮面ライダー」という由緒正しきヒーローの系譜にその名を連ねたのだから。