私的「仮面ライダークウガ」論 Vol.1

第1話「復活」/第2話「変身」/第3話「東京」/第4話「疾走」

クウガ誕生・TRCS2000登場編

['00/2/24 last up date]


私は本来ビデオ撮影が好きではない。特に時代劇や特撮はいかにも「作り物」っぽく見えるか らなのだが、今回ハイビジョンを使ったこの作品に関しては全く違和感を感じない。逆にリアル 過ぎて実況生中継を見せられているような気にさえなってしまう。が、そのリアリティがこの作 品制作のコンセプトだと言う。これまでの作品では「事件の表面化」「警察の介入」「その時人 々はどのように行動するのか」などごく当たり前の事が禁じ手だった。だがクウガではそれらを シュミレートする事でより一層リアルな空想世界を作り上げている。

全く偶然に変身能力を与えられた主人公が自分の意志で運命を変えて行く。それも「地球の平 和を守るため」とか力まずに「自分が大切だと思うモノを守りたい」とひょうひょうと言っての ける、そのスタンスが凄く現代的で人間らしくてカッコイイ。もしクウガの設定が「自分の意志 とは無関係に改造された」とか「親の仇」とか「運命」などがベースになっていたらたちまち「 こんなの仮面ライダーじゃない」と拒否されていただろう。今までの仮面ライダーとは全く違う 世界観を打ち出しそれに加え設定が細部まで練られている事がスタートダッシュの成功につなが ったと言えるのではないか。

ストーリーに矛盾が生じないよう丁寧に書き込まれている脚本に好感が持てる。あまりにも緻 密な展開にツッ込む隙がないのが難点だが(苦笑)。特に 第4話では怪人にやられて転がった白 バイを奪い取って怪人を追う五代。だが驚異的なスピードで逃げる怪人に「パワー不足で追いつ けず悔しがっている五代」を伏線に張っておいてから警視庁で開発されていた白バイの新型車両 トライチェイサー2000を五代に与える一条刑事(いくら自分が開発に関わっていたからって地 方の一介の平刑事が独断でそんな事していいのか!?ってツッコミはとりあえず置いておいて^^;) と言うシーンが秀逸。それもすぐに渡すのではなく「こいつに与えていいのだろうか」と苦悩す る一条刑事を目一杯見せてから決断させるなど演出も細やかでこだわった作りをしている。

変身シーンにもきちんと理由付けがなされている。例えば変身ベルトはこれまでのシリーズで は「普段は見えないのにいつ付けてるのか」との疑問が常に付きまとっていたが、これも最初に 体内に吸収された事実を見せ変身の時には体内から出て来るシーンを見せる事によって疑問が解 消された。また変身も「五代の怒りの感情」をキャッチしたベルトが体内から現れ変身ポーズを 取る事によって初めて「変身可能な肉体」に変化し、戦闘中はパンチやキック等強い衝撃を受け た部署から装着変身して行く過程をきちんと見せている。変身ポーズは「変身可能な肉体組織に 変化するための起動スイッチ」なのだ。変身シーンは毎回新撮りでそれもこの作品の売りのひと つらしいが、確かにこの変身方法ではバンクが使えないだろう(毎回変身の仕方が違うのだし)。

更に、警察に包囲され狙撃された後に五代が語る言葉がスゴイ。「ピストルで撃たれちゃって チクチク痒くて大変だったの」成る程、変身後の肉体組織はピストルで撃たれてもせいぜい虫に 刺された程度にしか感じないのかと妙に納得。こうした事例を挙げて「仮面ライダーが強い理由」 をひとつひとつ明確にして行くと同時に、歴代ライダーが抱えて来た小さい疑問をいい加減に済 まさずきちんと正面から取り組んで行く姿勢にスタッフの強い意気込みを感じる。

またクウガのアクションにも工夫が見られる。初めて変身した時は己の能力も戦い方も知らず ただがむしゃらに怪人と取っ組み合っていただけだったのが、戦闘を繰り返すうちに自己の力と 技に気づいて行く様子が立ち回りにきちんと反映されている。それは歴代ライダーたちが行って 来た「特訓」とは違うものの「実戦の中で身に付けて行く」と言う意味では同じ事だろう。

一部に「変身」の掛け声が頼りないとの意見も聞かれるが、情報筋によると変身ポーズひとつ とっても腕に震えが来る程アクション監督に絞られているらしい(苦笑)。私的には少々頼りな くても良いのではないか、と思っている。何故ならこのテの作品は一種の「成長物語」と捉えて いるからだ。頼りなかったお兄ちゃんが戦いの中で人間的にもヒーローとしても成長し変わって 行く過程が視聴者に一番判りやすい形で表現出来るのが変身ポーズだと思う。最初からカッコ良 くて頼り甲斐があるのは「先輩」だけで良い。そしてこの作品において、変身こそしないものの 「平和を守って来た先輩」と言うスタンスで居るのが一条刑事だと思う。その「先輩」が平和を 守る任務を託したのが己の職務権限を越えてトライチェイサー2000を五代に与えた瞬間だったの ではないか。

トライチェイサー2000に乗り変身する五代、「五代、任せたぞ!」と言うかのように格納庫の 扉を開ける一条刑事、疾走するクウガ・・・このシーンを観た時、歴代ライダーが築いて来たコ ンセプトがこの作品にもきちんと受け継がれていると感じた。

バイクアクションも「無駄に長い」と言う意見が複数あった。初見の際には私も確かにそう思 った。ガレキの山をわざわざバイクで乗り越える必要があるのか?自力で跳んだ方が早いんじゃ ないか、と。だが、本当にそうだろうか・・・?このアクションはクウガ=五代の「思い」が込 められたシーンではないのか。友人の桜子には「変身しないで」と言われ一条刑事には邪魔者扱 いされ(勿論二人とも五代を心配する余りの事なのだが)己の力も把握出来ず夢中で孤独に戦っ ていたクウガに初めて出来た「味方」、それがトライチェイサー2000。自分の足となり武器とな るマシンを駆って敵を追い詰める姿に五代の強い「思い」を感じた。

つまり「仮面ライダークウガ」と言う作品はかつての「仮面ライダー」と言うシリーズから抽 出したエキスをベースに新しい味付けを施した、今までに食べた事がない全く新しい料理なのだ。 だからタイトルだけ見て「これは絶対にこういう味だ」と思い込むと火傷をする。温かいか冷た いか、美味いかマズイか、先入観を持たずに一度食べてみて欲しい。この作品の美味しさがきっ と分かると思う。

だが大方の予想通り、やはり視聴中心層であるチビッコたちの反応が今ひとつのようだ。 1話 完結でないためドラマ部分が多すぎる事が大きな理由だがそれは最初から制作サイドも判ってい るはずである。過去においてハードタッチの作風が路線変更を余儀なくされた作品も多い。それ をあえてこうした形を取ってスタートしたのだから、この路線だけは絶対に曲げないで欲しい。

主人公 五代雄介のぼのぼのとした雰囲気は仮面ライダーに変身する青年としてはやや弱い感 が否めない。だが普段は軽い優しいお兄ちゃんでも、いざキメる時はビシッとキメる事が出来れ ばヒーローとして認めてもらえるはずである。実際、仮面ライダーとしては新米だし素面ではま だまだ全然強くないのだが「このお兄ちゃんの側にいれば大丈夫」という安心感を感じさせるキ ャラクターになって来ている。今の状態から推測すると恐らく今後も素面での立ち回りは少ない かも知れないが、逆に冒険家のタフガイと言う設定を生かして「精神面の強さ」を打ち出せれば 成功だと思う。

主役を張るオダギリジョー君はジャニーズ風のイマドキのお兄ちゃんだが 18歳から2年間アメ リカ留学の経験があり特技がジャグラーなど意外な一面を持つ。そのため「冒険家で1999の特技 を持つ男」である「五代雄介」の設定と上手くリンクしているようだ。端正な顔立ちにとぼけた 表情とおちゃらけた台詞で周囲を振り回す五代。見た目と性格が全く釣り合わないがそれもどう やらジョー君のであるらしい。

主人公に代わってヒーローばりのカッコ良さと「男の色気」を担当しているのが 一条薫刑事 (演:葛山信吾)。クウガに変身してしまう五代を心配しながらも徐々に信頼し始めているが、 そこはそれ刑事と言う立場上、真っ先に現場に飛び込み怪人に やられるハメになる。意識を失 って病院のベットで目を覚ます、骨折しているにも関わらず平静を装いながら一人になると苦し げな表情を見せる等これまでならヒーローが担当していたはずの女性ファン悩殺シーンを一手 に引き受けてくれる(あ、火だるまになった挙げ句気絶して五代の肩に抱かれて目を覚ます って言う、ちょっとイケナイ妄想に走りそうな場面もあったなあ ^^;)一条刑事。つまり「傷つ いたヒーローがそれでも悪に立ち向かうカッコ良さ」と言う長年培われて来た「ヒーローの基本 コンセプト」がクウガで分業化された事になる。

本来ならば主人公に感情移入し主人公の目でストーリーを追うはずであるにも関わらず、早く も第2話から「一条刑事の目から見た事件」になりつつあるのが気がかり。ひょうひょうとして いる五代は感情が読み難い部分があり、それに対して一条刑事は感情の機微が表情の端々に伺え るため視聴者が感情移入しやすいのだ。キャラが立っている二人であるから、今後お互いを潰さ ないようどのように展開して行くか楽しみでもある。


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