私的「仮面ライダークウガ」論 Vol.10

第19話「霊石」

['00/6/7 last up date]


五代雄介が死んだ。グロンギの脅威から人々を守る者は、もう、いない・・・

五代が心停止に陥り「クウガのいない世界」を描いたこのエピソードは、第18話からの続編で ありながらもライターがメインの荒川稔久氏、演出が石田秀範氏に戻り、ダークな印象を残した 前話とはやや趣を変えて「五代の死」と言う現実に健気に立ち向かって行く女性たちを中心に、 登場人物全員がそれぞれの立場で自分の役割をしっかり認識し、科せられた役目を果たすために 全力でトライする姿を描いている。だがやはり30分枠の作品で全員にスポットをあてるのは無理 があったようだ。それでなくても登場人物の多い作品であるためストーリーの芯がややブレてし まったような感が否めない事は残念。

このエピソードで一番オイシイ処を持って行ったのはやはり椿医師だろう。容態急変のコール に看護婦や助手のドクター達が飛び込んで来る。緊急事態に騒然としている中、聞き取れない程 の速さで医療専門用語が飛び交う。この場合の「台詞」は臨場感を出すための効果音のようなも のだから聞き取れなくても良いのだろう。目線で捉えたカメラアングルは上下左右不安定に動き、 その慌ただしさが逆に椿の心理状態を表わしているようである。「お前が死んだらどうなる!? いつもみたいに大丈夫って言えよっ!」仕事だからではない、本当に五代を救いたい一心であら ゆる手段を尽くす椿。助手たちの諦め顔とは対照的に必死で心臓マッサージを続ける椿だったが 五代の心臓が再び動き出す事はなかった。

明かりの消えた診察室で一人電話に向かう椿。一条や桜子へ伝えなければならない辛い報告を 躊躇しているのだ。死亡宣告をしなければならない医師としての立場が椿を苦しめる。薄明かり の中に浮かび上がる椿の横顔は映像としてもとても綺麗で、このエピソードで 椿ファンが激増 したであろう事は想像に難くない。

五代雄介死亡の報を聞き、愕然としながらも平静を装うとする一条に杉田刑事が問い掛ける。 「4号の事か・・・?」一条が4号の正体を知りながら隠している事を杉田は気付いているのだろ う。だがあえてそこには触れず「アイツにも色々都合があるんだろう。俺たちは俺たちで今出来 る事を頑張ろうぜ」と一条を励ます。前話でも殉職した同僚の墓参りに行った事などを台詞に織 り込ませていて、見た目のがらっぱちな印象とは違う杉田の男の優しさを描いている。

五代の死を嫌でも「現実」として受け止めるしかない椿や一条とは対照的に、桜子やみのりは 死亡宣告を聞いても尚、五代を信じ続けていた。そして二人とは別にもう一人、五代を信じてい る女性がいた。科警研の榎田女史である。憔悴している一条に「彼の事だから大丈夫だよね!」 と明るくたたみかける。彼女たちをそこまで思い込ませるのは一体何だろう。「今まで大丈夫だ ったから」だけで信じ続ける事には無理を感じる。それが出来るのならこれまで何度も五代と共 に死線を潜り抜けて来た一条の方が「信じやすい」と思うからだ。やはり「命」を育む力を持っ た「女」と言う性は「命の力」というものに対して本能的に何かを感じ取る事が出来るのかも知 れない。

一条に特殊弾丸で撃たれたキノコ怪人は撃たれた事によって更にパワーアップすると言う信じ られない力を持っていた。体力を回復したキノコ怪人はそれ以前とは比較にならない程攻撃的に なり次々と人間を襲って行く。攻撃の矛先が一条に向いたその瞬間、キノコ怪人は驚きの声を上 げる「・・・クウガ!?」。そして一条も我が目を疑った。殺したと思った、そして死んだと思 っていたクウガが現れたのだ。それも グローイングフォームで。この場面の前では五代復活の シーンをあえて見せず「看護婦の呆然とした表情」だけで表現していたため、完全に復調しない まま、それでも一条たちのピンチを察して駆け付けて来たのだろうと思ったら、五代の気持ちに 泣けた。

杉田の「2号か?」の声にハッと我に帰った一条は叫ぶ「白い4号ですっ!」。そしてパワー不 足で苦戦している様子のクウガを見て取った杉田が号令をかける「援護しろっ!!」。それは、 初めて警察組織がクウガのバックアップに立った事を示す台詞だった。そして五代が生死の堺に いた頃、一条は「 4号現れなかったな」と言う同僚たちの呟きを耳にした。何時の間にか一条の 同僚たちもクウガを頼りにしていたのだった。

打たれ強くなってしまったキノコ怪人にパワー不足のクウガのキックは通じない。だが持てる 力の全てを右足に集中したクウガの最後のマイティキックでキノコ怪人は爆発四散する。そして 変身を解き満足そうな笑顔でサムズアップする五代にキッとなった表情の一条が言い放つ「遅い ぞ!五代っ!」。恐らく「俺は待っている」なんて伝言を聞いてないであろう五代は その意味 も分からずポカンとするが、踵を反した一条が背中越しに見せたサムズアップに全てを理解した 五代と一条の、お互い何も語らないけれど相手を知り尽くしているような笑顔の応酬が最高のク ライマックスであった。

今回、連続エピソードを長石多可男監督から石田秀範監督にスイッチした事で、キャラクター の描かれ方に顕著な違いが見られた。これまでのエピソードを見ても 石田監督作品は一条や椿 などサブキャラの魅力が際立つ。例えば 第1話「復活」のクライマックスで一条がクウガに向 かって「俺を、助けた・・・?」と問い掛ける場面や第2話「変身」で火だるまになった一条、 第8話「射手」クライマックスの一条の「無事で良かった」の台詞や 第14話「前兆」で蝶野に 死の重さを語る椿、などのシーンが印象的。また、ロングカットが多いのも特徴だろう。

一方、長石監督作品は五代をとても綺麗に撮る。 第6話「青龍」ではベッドでぐっすり眠り 込んでいる無防備な寝顔やクライマックスでの戦い疲れた表情、 第12話「恩師」でキックのト レーニングをする場面、第18話「喪失」の”やられ”などを見ても五代雄介をちゃんと「主人 公」として扱っているように感じられる。

また、渡辺勝也監督作品はクウガの映像がとてもカッコイイ。第4話「疾走」の格納庫からT RCS2000が発進するシーン、第10話「熾烈」でタイタンフォームのクウガが次々と襲い掛かる爆 発に身じろぎもせずイカ怪人に向かって行くシーン、第15話「装甲」 ではトライゴウラムの走 りが印象に残る。

主人公を主人公らしく描く、と言う点において私的には長石演出が一番しっくり来るのだが、 「ヒーローを当たり前に撮る」だけでは済まない「クウガ」の制作コンセプトを考えた時、「ク ウガ」の世界観を描き出しているのがメイン監督三人三様の個性ならば、石田演出、渡辺演出も アリなのかなと思う。それぞれの監督の個性が絡み合いもっともっと面白い作品になって行く事 を願っている。


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