私的「仮面ライダークウガ」論 Vol.11

第20話「笑顔」

['00/6/14 last up date]


サブタイトル通り「生き返って良かったね、五代クン ♪」って喜びの笑顔が溢れたエピソ ード。「誤診」のショックから立ち直り次のナンパのターゲットを桜子に絞った椿先生の精神力 もたくましいし(相変わらず五代のお腹には興味津々のようだが ^^;)、「気楽すぎっ!」と小 言を言いながらも笑顔が輝く桜子、「ごめんな、心配かけて」と言う五代に「そんなに(心配) しなかった」と軽くかわすみのりの兄を気遣う笑顔にもほっとさせられた。

だがやはり一番印象に残るのは完璧に五代のペースに巻き込まれてしまった一条刑事が吹き出 しそうになるのをこらえている表情。これまでは口角を軽く上げる「微笑」だったが今回初めて 歯を見せて笑う。 刑事と言う仕事柄厳しい表情の多かった一条だけに五代の復活を心から喜ん でいるのがこちらに伝わって来る。

そして第18、19話と 2週間も「泣かされた」ファンを「笑顔」にするために(?)ギャグ満載、 オダギリパワー大爆発の展開で一挙に 第16話以前の明るいイメージに戻そうとする、かなり 強引な筋立てになっている。

だが、このエピソードの持つ意味はそれだけではない。作中「あ、この場面、どっかで見た」 と気付いた視聴者も多いのではないだろうか。実はこのエピソードは明るいイメージの中に、あ る種のメッセージ性を含んだ作品ではないだろうかと思う。表現を変えれば一種の ダイジェス ト版とも言えるかも知れない。順を追って説明する。

エピソード冒頭、一条刑事の車に乗る五代雄介。「別の色になる時に、勢いつけるために何か 言いたいんですよ」と一条に語り掛ける。そのあまりにも呑気な様子に苦笑する一条。 TRCSに 乗り始めてから一条の車に同乗する事のなかった五代だが、以前一度だけ同じ場面があった。二 人をフロントガラス越しに同じ画面に入れ込んだカメラアングルは、第4話「疾走」でTRCS2000 を譲渡される直前のパトカー車中のシーンにそっくりである。このシーンは五代が「自分が大切 だと思うモノを守りたい」から戦うのだと一条に訴え、一条は五代を自分と同じ熱い魂の持ち主 と認める重要な場面であった。あの時と同じシチュエイションで「現在」を見せる事によって、 共に死線を越えて戦って来た二人の感情やお互いへの思いの変化を表現しているのではないだ ろうか。

立ち上がり当初一条が握っていた 主導権は、第10話「熾烈」でフィフティ・フィフティとな り、徐々に五代にシフトしつつこの第20話において立場を完全に逆転させた。恐らく五代が現れ るまでは誰よりも自分が先頭切って突っ走って来たのであろう一条刑事。だが五代がクウガとし て戦う事を認めTRCS2000を渡した時からそのスタンスは変化し、五代の後ろをハラハラしながら 追いかけて行かざるを得なくなった。最初は「後を追いかける」事に戸惑いながらも五代にだけ は「自分の前をつっ走る」事を許したのだろう。生死の堺から蘇って理性のタガが外れたのか、 かなり暴走気味ではじけまくった五代のハチャメチャな言動に苦笑しながら見守る姿はまるで 保護者のようでもある。

一条と共に挨拶回り(?)をする五代は、一条を考古学研究室向かわせ自分は窓から不法侵入 する(汗)。その五代を桜子の肩なめショットで撮り桜子の笑顔につなげる一連のカットは 第1 話「復活」に見る事が出来る。魔除けのお面を被った五代に「(校舎の壁を登ったりして) 怒 られるのは私たち」と言う桜子と「校舎の壁が登ってくれと言ってる」と言い訳をする五代の会 話の流れも第1話と同じパターンで続く。第1話のこの応酬は五代と桜子の関係(友達以上恋人未 満)を印象付ける大事な場面であり、同じシチュエイションを再現した上で「お帰り、五代クン」 と桜子に言わせる展開は、二人が最初からと変わらず揺らぎない信頼関係にある事を示してい る。

爆発四散した肉片からクローンとして再生したキノコ怪人が警官たちを襲撃するシーンでは、 部下たちが目の前で全員やられ一人生き残った杉田刑事が追い詰められたギリギリの状況にクウ ガが現れTRCSの前輪でキノコ怪人を張り倒す。丁度、 第4話で初めて杉田がクウガに助けられた 時と同じシチュエイションだ。このシーンは杉田がクウガを「他の未確認生命体とは違う存在」 だと認めた場面であり、クウガに「大丈夫ですか、刑事さん」と言われ「・・・へっ?」と状況 を認識出来ず脅えた表情を見せたこの時と、クウガを見て「 4号!!」と嬉しそうに叫んだ今回 とでは杉田の感情的スタンスが相当変化している事が伺える。杉田の変化はイコール警察関係 者のクウガへ対応の変化と見て良いだろう。

1年間と言う長丁場の作品において「これはちょっと作品のイメージが違うのではないか」と 思わせるやや脱線気味なエピソードが存在するのは当然である。私は第17話を観た時「何故ここ でダイジェストを入れなければならないのか」と疑問を感じ「作品の本筋からはずれたエピソ ード」と位置付けた。だが第20話を観た時、それが私の早計であった事を思い知らされた。

第17話のダイジェスト版、第18・19話での五代の死と復活、そして第20話でこれまでのエピ ソードの中からそれぞれのキャラクターの五代雄介(クウガ)に対するスタンスを表現した重要 なシーンを同じ状況下で再現し、各キャラクターの五代に対する「思い」を 過去と現在とで対 比させる構成は極めて高度で、4編のエピソードが対を成し見事に完結されている。これはダイ ジェストをひと区切りとして各キャラクターのスタンスをあらためて確立させ、新たなる展開に つなげるための一種のセレモニーだったのではないだろうか。

この緻密な構成はハッキリ言ってお子様向け番組の域をはるかに越えたものであり、制作サイ ドが今のテンションとクオリティを維持したまま全52話( 4クール予定)を完成させる事が出来 るのなら、「クウガ」は例え作中に一度も「仮面ライダー」の名が登場せずとも後年に残る名作 となる事は間違いないだろう。


Vol.12 トップページへ