私的「仮面ライダークウガ」論 Vol.19

第34話「戦慄」/第35話「愛憎」

['00/10/16 last up date]


緑川学園高校の 2年生男子生徒だけをターゲットに殺戮を始めたヤマアラシ怪人。そのやり方 はこれまでになく残酷で、体内に埋め込まれた針が 4日後に脳の中で実体化し脳内出血を引き起 こすものだった。針を刺された男子生徒たちは目に見えぬ未確認生命体の影と確実に訪れるであ ろう死の恐怖に脅えながら次々と息絶えて行く。そしてとうとう男子生徒の一人が死の恐怖に耐 え切れなくなり自殺した。だがその死はグロンギ的にはゲームの成果にカウントされない。規定 日数以内に決まった数だけ殺さなければならないルールを持つヤマアラシ怪人はただ一人針を刺 していなかった男子転校生を執拗に狙う。

同じ頃、長野でグロンギ人間体が大量に殺されると言う事件が発生、長野県警からの依頼で桜 子さんが現地入りする。大量惨殺事件はその目撃証言からこれまで行方不明となっていた 第0号 の仕業ではないかと推測されていたが、事件の起こった凄惨な生臭い倉庫の壁にはリント語の「 戦士クウガ」に酷似した血文字が描かれていた。誰が、一体何のために書いたのか・・・。桜子 さんは何かを察知したかのように写真を撮り続ける。

独自のルールにのっとって殺人を繰り返すグロンギ。それを阻止しようと戦うクウガ。ストー リー自体はこれまでと何ら変りない展開である。だがそこへ「みのりの教え子同士のケンカ」と 言う小さなキッカケを挟み「分かり合えるよ、だって人間同士なんだから」と語る五代の言葉を 伏線にして物語は後半大きく転換する。

「いきなりはあっちだもん。ボクの作ってたお城、いきなり違うお城にしようとした。すごい 嫌だった・・・」まるでリント族とグロンギ族との因縁を示唆するかのような園児の言葉。それ に対して「蹴飛ばす前に言ってみれば良かったのに」と諭す五代。話し合いで解決するのが一番 良い、そう分かってはいても自分は拳を使うしか手段がないと知っている五代の、自分自身を戒 めているかのような言葉が切ない。

だがヤマアラシ怪人と戦うクウガにはもはや「相手(グロンギ)を理解しよう」などと思う気 持ちなど微塵もない。接近戦に弱く無抵抗に近いヤマアラシ怪人の顔をひたすら殴り続けるクウ ガ。飛び散る返り血が生々しい。そしてマイティフォームからタイタンフォーム、ライジングタ イタンへと超変身し続けながら怪人を追い詰め、すでに戦闘意欲を失い恐慌状態に陥ったヤマア ラシ怪人へとタイタンソードを何度も振り降ろすその姿には「怒り」よりもむしろ 「憎悪」が 強く感じられた。最初は「無差別殺人を繰り返すグロンギへの怒り」で変身していた五代。だが 今や「グロンギへの憎しみ」が彼の全精神を支配しているような気さえする。その憎しみはどこ から来ているのだろうか。もしも、かつてグロンギ族を封印したリントの戦士の魂が五代の体内 のアークルに作用しているのだとしたら・・・?古代の戦いの記憶を持ったアークルが五代の脳 を蝕みつつあるとしたら・・・?やはり五代はいつか「戦うためだけの生物兵器」になってしま うのだろうか。そして、そんな未来を暗示するかのようにクウガの 最終形態と言われる「アル ティメットフォーム」のシルエットが浮かぶ。

変身を解いた五代は、だがその顔を上げない。「苦しむ姿を見ているのが楽しい」と言ったヤ マアラシ怪人と次々に犠牲となって行く少年たちの姿にキレてしまい、憎悪に支配され感情のま まに拳を振るってしまった自分に少なからずショックを受けているのか。夕陽の逆光に浮かぶ五 代の横顔はあまりにも美し過ぎてそれが余計に哀しみを誘う。

一体「クウガ」はどこまで切ない作品になって行くのだろう。笑顔の奥で、暴力を否定してい ながら自らは闘わなければならない五代が自己矛盾の中でどれほど苦しんでいるか、そして表面 化こそしていないが確実に「戦士」となりつつある自分自身との戦いを続ける五代の姿は見てい るこちらが辛くなって行く。戦闘シーンが必要不可欠な「ヒーロー作品」において暴力を否定す る事がいかに難しいか、説教臭い台詞ではなく映像で表現する事がいかに難しいかをつくづく感 じさせられる。作品の視聴中心層であるお子様たちに「ヒーローだって好き好んで暴力振るって る訳じゃない」って事を心に刻み付けるためには、ややトラウマに近い心理操作も必要なのかも 知れない。

次回エピソードより、グロンギと第0号 そして「戦士クウガ」の成り立ちなど、これまで謎と されて来た事が少しずつ明らかにされて行くようだ。お子様そっちのけで「オタクなおっきいお 友達」と「今までヒーローモノなんて全然興味なかったおっきいお友達」を大量に巻き込み突っ 走って来た「クウガ」は、いよいよ第4クール 最終コーナーを曲がろうとしている。ここを曲が ってしまえば後はゴールまで一気に走り抜けるだけである。残りあと14話(予定では全49話らし い)と思うと寂しい気がするのも否めないが、まだまだクライマックスは見えない。最後には大 どんでん返しでぜひとも視聴者を裏切って欲しい。


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