私的「仮面ライダークウガ」論 Vol.9

第18話「喪失」

['00/5/28 last up date]


「クウガ」を制作する上でスタッフが一番こだわっているのが「今までのライダーでは当然だ ったものを全て排除する」事らしい。だから歴代ライダーのような派手な見得も切らない、必殺 技も叫ばない、主人公はもちろん改造すらされていない。そんな作品だから今更何が出て来ても 驚きはしないが、さすがにオカマなキノコ怪人 には焦った。もちろん今までにも女性に化ける 怪人は沢山登場したが、オカマ怪人は前代未聞だろう(苦笑)。

だがこの怪人は軟弱な姿とは裏腹に、初めて「仮面ライダーの敵」と言える力を持ったキャラ クターではないかと思う。今まで登場した怪人は、相手を殴り殺すヒョウ怪人、高所から突き落 とすバッタ怪人、針で刺し殺すハチ怪人、爆死させるイカ怪人、角で突き刺すサイ怪人、噛み殺 すピラニア怪人、轢死させるヤドカリ怪人と、外部からの攻撃で相手にダメージを与える原始的 な方法ばかりだった。だが、本来仮面ライダーに登場する敵は人目につかない場所で悪事を働く のが手口あり、毒を貯水タンクやダムに流したり病原菌で人間の体を冒すのも一種の「お決まり の作戦」で、その点において人間をかどわかしながら内臓を腐食させる毒を相手の体内に送り込 むキノコ怪人はいかにも陰湿でライダーっぽいイメージがある。

実は予告を見た段階から「キノコ怪人の人間体は何故オカマなのか」とずっと考えていた(考 えるなよ ^^;)。初めは「新宿に出没」と言うキーワードから「新宿」「歌舞伎町」「風俗店」 と連想ゲームのように思い付く限りの単語を並べ、そして出た結論が 新宿二丁目(爆)だった。 ここは同性愛嗜好者が多く集まるので有名な地域。そこに怪人が現れて人間を襲うとしたら、や っぱりこういうシチュエイションが一番現実的なのだろうか?と思ったがこれはハズレ(自爆)。 恐らく、男女構わずキスをして毒を媒介するのが手口のキノコ怪人にはユニセックスである方が 自然で行動しやすいのだろう。そしてもうひとつ「何故モチーフがキノコなのか」これも疑問だ った。他の食虫植物のようなものでも良かったのではないかと思ったが、造型(特に頭部)を見 て妙に納得。だって、あのキノコ怪人ってばとってもエロチック!

そのオカマ、じゃなくてキノコ怪人に一瞬の隙を突かれクウガは毒を吹き込まれてしまう。痙 攣しチアノーゼを起こして苦しむ五代。このエピソード冒頭、ポレポレの横でストンプを練習し 一条刑事からの連絡にTRCSで飛び出して行く五代、と言う場面は私が偶然ロケを見学した時に撮 影されたもの。とても思い入れのあるエピソードなだけに、あんなに爽やかなシーンの後に来る のが これかっ!?と思ったら一瞬目の前が暗くなった。あの時、ロケ現場で一緒に見学してい たお母さん達も今ごろ同じ事を感じているのではないか、と思う。

はっきり言って、見ているのが辛くなる展開。特に五代の容体が急変し椿医師が病室に飛び込 んで来た瞬間に心停止する場面などは思わず「そこまでしなくても!」と叫んでしまった。今ま でにも仮死状態になったヒーローは沢山いたが、そこはそれ誰も医者の診断などなかったから「 あれはね」と言い訳をしながらも視聴者の子供たちに「死」の概念を教えられた。だが、今回は あまりにもリアル過ぎる。もちろん私たち「大人」には分かる。所詮ドラマだ、放送期間は 1年 間だし今ここで主人公が死んでしまうはずがない、 3部作でこの後のサブタイトルが「霊石」「 笑顔」と続くからには最後にはちゃんと五代の笑顔が戻るのだろう、と・・・。だが見ているお 子さん達にはどう受け止められるだろうか。大好きな五代のお兄ちゃんが死んじゃった!それは 酷いショックではないのか。

そして何よりも私が居たたまれなかったのは、五代を取り巻く仲間たちの描かれ方。五代の回 復を信じて捜査を続ける一条刑事や医者として最善を尽くそうとする椿医師は格好良すぎるし、 取り乱したり泣いたりせずに「自分の場所で自分に出来る事」を精一杯やろうとする桜子さんや みのりちゃんはとても凛としている。それはとても健気だけれど、より一層哀しみを深くする。 つまり、本当に見ているのが苦しくなるほど哀しみが漂ったエピソードになってしまったのだ。 それは脚本や映像がリアルだから、だけではなく演じるキャストの力量による処が大きいだろう。

今回演出をされたのは 長石多可男監督。「仮面ライダー」の頃から助監督として現場にいた 方だが「仮面ライダーV3」で一本脚本を書いている。それが第49話「銃声一発!風見志郎倒る !!」変身不能に陥った風見志郎の心理をこれでもか!と言うほど描写し、ヒーローの弱さ危う さを描きながらも「傷ついたヒーロー」のカッコ良さを見せつけ女性ファンを増加させたと思わ れる異色の作品。その脚本を書いた方が演出されたこのエピソード。痙攣起こして運ばれる五代 のメイクはさすがに「やり過ぎだ ^^;」と思ったが(苦笑)集中治療室で 胸はだけて苦しむ五 代クンには思わず「さすがは長石監督、綺麗どころ を押さえていらっしゃる♪」(笑)この後 作品のクオリティを落とさずいかにヒーローを美味しく見せてくれるか楽しみでもある。


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